2020年12月の労働力調査の結果から

 労働力調査の12月分の結果が発表された。15歳以上人口は26万人、0.2%減少し、このうち労働力人口は23万人、0.3%減少した。この結果、労働力人口比率は0.2%ポイント低下した。新型コロナの衝撃による労働市場からの退出はあったとしても一時的なものにとどまった模様である。労働供給が余り減らない以上、労働需要を維持・拡大し、就業、雇用を確保することが急務となる。
 就業者は71万人、1.1%の減少であった。この結果、完全失業者は49万人増加し、完全失業率は2.1%から2.8%へ、0.7%ポイント上昇した。この数字については、注意が必要である。就業者は、従業者と休業者から構成される。職には就いているけれども、休んでいるというのが休業者である。
 従業者は、88万人、1.3%減少した。そして休業者は16万人、8.6%増加した。事業主が雇用調整助成金などを活用し、労働者を休業させ、それによって雇用が維持されている。その規模を明確に示すことはできないが、かなりいることは確かである。仮に休業者の増加分が、すべて失業していたとすれば、完全失業者は65万人増え、210万人になっていたという計算になる。この場合の完全失業率は3.1%である。雇用調整助成金制度には、市場の調整を妨げるという批判もあるが、今回の問題を見ると、有益な制度であると評価すべきだろう。
 さて、従業者の内訳を調べる。家計を支えていることが多いと思われる「主に仕事」は15万人、0.3%の減少であった。人数も少なく、減少率は比較的低い。これに対して、「通学のかたわら仕事」は27万人、12.1%の減少である。12月は、忘年会などの多い飲食店の仕事、年末商戦の販売、配達の仕事などが増えるはずだった。これが失われた効果が大きいと思われる。「家事などのかたわら仕事」は46万人、5.7%の減少であった。従業者の減少の中心はこの層であった。
 従業者の減少の中心が「家事のかたわら仕事」グループであり、「主に仕事」というグループが働き続けていることは、社会の安定につながっているだろう。「通学のかたわら仕事」のグループは、学費を負担していることも多く、学業を続けられるようにするために配慮が必要だ。将来の人的資源の確保、貧困層の拡大防止、人口減少を食い止めるためにも社会的な支出を惜しむべきではない。
 総数では減少している就業者の中で増加しているのが、一般の「雇無業主」である。これは、他人を雇用していない自営業者であって、内職ではないものである。12万人、3.1%の増加であった。仕事を失ったものが、配達などの仕事を始めているのが反映されていると思われる。一見すると就業の場が増えたと考えてしまうかもしれないが、これが雇用の場がないためのやむを得ない選択である恐れがある。これはむしろ、労働市場の需給の悪化と捉えるべきだろう。
 就業者のうち、役員を除く雇用者は75万人、1.3%の減少であった。これを、さらに「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」に分けると、対照的な動きとなっている。正規は16万人、0.5%増加し、逆に、非正規は86万人、3.9%減少した。仮に、正規の増加がすべて非正規からの転換であったとしても、労働市場から退出したのがすべて任意で、かつ、非正規だったとしても、非正規は50万人近く職を失ったことになる。非正規労働者が雇用の調整弁という役割を持つことを考えれば、この事態そのものは不思議ではない。非正規のうち、「パート」は31万人、3.0%の減少、「アルバイト」は38万人、7.5%の減少であった。アルバイトの減少の大きさが目立っている。正規労働者に比べて非正規労働者の状況は厳しいと考えるべきであり、職を失ったものに当面の生活の支えを与えるとともに、早期に労働市場の需給の改善のための方策をとるべきだ。
 12月は、特殊な要因のある月である。1月の状況を注目したい。3月2日発表予定である。なお、労働力調査は、留め置き法、つまり調査員が対象世帯を訪問して協力を依頼し、調査票を配布、説明して、後日回収に行くという方式をとっている。コロナ禍の中で、調査に当たっている調査員の皆さん、回答してくださっている対象世帯の皆さんに感謝する。

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